「グローバルとは何か」 池上彰氏

2015年1月23日、ANAインターコンチネンタル東京で開催されていた、「NTT DATA Innovation Conference 2015」の基調講演に、池上彰氏が登壇されていました。

池上彰氏の講演、「グローバルとは何か」(13:40～14:30)について聞いたことを纏めてみました。

「グローバルとは何か」 池上彰氏

講演内容

池上彰氏について

池上彰氏は、東京工業大学で教授を行っている。
本日２コマの授業を行って、こちらの会場にやってきた。

東京工業大学から「出身の総理大臣が評判を悪くした」ので、是非にと言われ頼まれた。（一同笑）

大学の授業にて

池上彰氏の授業で、生徒に「襲撃を受けたフランスの新聞社シャルリー・エブドがムハンマドの風刺画を掲載した態度についてどう思うか？風刺画を掲載し続けるのは良いことなのか？イスラム教の方々を傷つける事には成らないか？」とディベートを行った。

生徒からは以下の様な意見が出た。
「テロには屈しないから掲載する。」
「風刺画を掲載する事はイスラム教の方々を傷つける事になる。」

池上彰氏は生徒に以下の様に生徒に聞いてみた。
「天皇陛下の風刺画を掲載するのは良いのだろうか？」

すると生徒からは、「表現の自由に節度も必要ではないか。」という意見も出た。

グローバルスタンダードとは？

グローバルスタンダードとは、アメリカのスタンダードでは無いか？
アメリカに行くとトイレの便器に、American Standardと書いてある。
アメリカの便器は高いので、用をたす時にイラッときてしまう。（一同笑）

今までは、イスラム世界の物の見方が欠けていた。
最近は、イスラムやアジアの事も教科書に増えてきた。

コロンブスより90年前に中国の鄭和(ていわ)から大航海時代が始まった。
この鄭和が南シナ海を開発したと言うのが、中国側の理屈。

それぞれの国や立場を理解するのが、本当のグローバル化ではないだろうか？

真のグローバル化とは一体何か？

最近は英語で授業を行う大学も出てきた。
日本の大学生は大学も出たのに、英語が話せない。

フィリピンではタガログ語に学術用語が無いので、英語で授業を行っている。

日本では福沢諭吉等が、学術用語が無かったので日本語を作った。

エコノミー：経済
フィロソフィー：哲学
コンペティション：競争

これらの様な学術用語を作成したので、日本では自国語で学術用語を話せるようになった。日本は英語が出来ないが、高度な学問が出来る。

グローバル化は、英語で授業を行うだけではないのではないか？
なんでも英語にすれば良いのか？

アメリカは段々と衰退していっている。

宗教について

今後は世界の様々な国にあったソリューションや宗教を考えていかないと、思わぬトラブルに会う。

インドネシアで、味の素は豚が原因で問題になったことがある。
あるタイヤメーカーでは、タイヤの刻みがコーランにみえることで、騒動になって回収した。

イスラム教の元でも販売して良いという、ハラルというのがある。
ハラルと言うのは許可という意味。
ハラルの反対の意味がハラムという言葉。
ボコ・ハラムで最近、皆さんも聞いたことがあると思いますが、そのハラム。

イスラエルでは、金曜の日没から土曜の日没まで火を使ってはいけないことになっている。
今は電気を使ってはいけないことになっているので、タイマーをセットしている。

食事は火を使ってはいけない間は、作り置きをしている。
冷蔵庫に入れてしまうと、開くと冷蔵庫の電気がついてしまう。

しかし、金曜の日没以降タイマーが働いて電気がつかない冷蔵庫（シャバット冷蔵庫）というのが登場して売れた。
これを開発したのがサムスン。

サムスンはグローバル化の一環として、１～２年間仕事はしなくてもいいから現地に溶け込む事を社員に行っている。
金曜の日没から自動運転をしているシャバットエレベーターというのもある。

インドでは、使用人に物を盗まれないように外から鍵をかけられる冷蔵庫もある。
これを開発したのもサムスン。

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教

ムハンマドの風刺画が何故イスラムの人々を怒らせたのか？
ムハンマドの絵は書いたらいけないことになっている。
では、ムハンマドとはどういう人物か？

予言者ではなく、預言者。
神から言葉をあずかった人。

キリスト教、ユダヤ教、イスラム教も同じ神を信じている。
アッラーはアラビア語で神様の意味。

マリアも神の言葉を直接聞いてはいない。
ガブリエルから身ごもることを伝えたれた。
イスラム教も同じ名前の天使がいる。

当時、神の言葉を暗唱で伝えていたが、それを書いていったのがコーラン。

ムハンマドとは神様から託された人間。

イスラムの世界では、男性はムハンマド（ムハマド）、女性はアイーシャという名前の人が多い。

一方フランスでは

フランスでは、英語で話しかけても、分からないふりをして無視される事がある。
挨拶で、昼ならボンジュール、夜ならボンソワールと言って、英語に切り替えるとちゃんと応対してくれる。

言葉が分からなくても、対応してくれるのが、本当のグローバルスタンダードなんじゃないでしょうか？

聖書について

ユダヤ人は聖書をもっている。
イエスはユダヤ教改革運動を行った。

イエス・キリストとは名前ではない。
キリストとは、救世主の意味。

福音書が沢山出回ったので、ローマでは４つの物だけを正統な物とした。
これを新約聖書という。
約は、翻訳の訳ではなく、約束の約。

旧約聖書はキリスト教がつけた名前なので、ユダヤ人にとってみればいい気はしない。

コーランは、皆が聖書の教えを守らないので、最後に出てきた。

グローバルとは？

世界にはイスラム教徒は15億人いる。

英語を話すだけがグローバルではない。
アイデンティティも大切で、日本という国に誇りを持たないと軽蔑される。

その国を愛し、誇りを持って、寛容の精神を持って、他の国と付き合っていく。

自分なりのアイデンティティを持って、他の国の人々と尊重していくのが、真のグローバルと言えるのでないか？

－以上－

最後に

この日、池上彰氏は、23:00からの日本人拘束事件の件で、ワールドビジネスサテライトに緊急生出演されていました。